私の名はロバート・ネビル。ニューヨークで生き残っている。
もし誰かこれを聞いているなら、もし誰か他にいるなら、誰でもいい、応えてほしい……。
66億人の絶滅と、たった1人の生存者…。
2012年、人間の姿が消え、死んだように静まり返るニューヨークの街。この街がかろうじて生きていることを伝えるのは、通りを走り抜けていく1台の真っ赤なマスタングだけ。運転しているのは、ロバート・ネビル(ウィル・スミス)。3年前、地球全土を覆いつくした災厄をくぐり抜け、この街で、そしておそらくは全世界で、ただ1人生き残った男である。
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たとえ実際には一度も訪れた事がなくても、ニューヨーク/マンハッタンの風景は日本中の誰もが知っている事と思う。そびえ立つ摩天楼に縦横無尽に張り巡らされた道路には一日中、大渋滞の車、車、車の波。街中の通りという通りには全世界から集まった様々な人種の人々がせわしなく闊歩し、白い息を吐きながら語り合い、大声で商売をしながら慌しく動き回っている。昼も夜もない、眠らない大都会。それが普通のイメージだろう?
ところがこの作品『アイ・アム・レジェンド』のオープニングでは、放置されたままになったタイムズスクエアは草ぼうぼうに荒れ果て、摩天楼は風化して崩れかけ、人影は誰一人見えず、鳥や動物がストリートを群れなして横切っている……という、驚くべき光景が展開する。台詞と言えばウィル・スミス演じる主人公、ロバート・ネビルが愛犬のサムに話しかけるか、独り言をいう時だけ、という異様な雰囲気。こんな風変わりな映画は久々に見た。