第二次世界大戦終結直後のモナコ、モンテカルロ。一流ホテルにボロボロの粗末なスーツ姿でフラリと現れた男。その手には札束の入ったブリーフケース。カジノで出会い、一夜を共にした令嬢(ドロレス・チャップリン)は、翌朝、その男の腕に強制収容所の囚人番号を示す刺青を見つけた……。
1936年、ドイツ、ベルリン。世界的な贋作師サリーことサロモン・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィクス)は「商売」に忙しい。その仕事とは、ドイツ国内での差別や虐待から逃げ出そうというユダヤ人同胞相手に偽造パスポートやビザを売ること。類稀なる芸術的な才能と用心深さ、そして強欲さで暴利を貪っていたサリーも、そろそろ潮時と考え、その夜逃げ出すはずだった。
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第二次大戦当時、ナチスドイツがイギリス経済の撹乱を狙って画策した史上最大の紙幣贋造事件が「ベルンハルト作戦」だそうだ。ヒムラー率いる親衛隊が立案し、この作品のヘルツォーク少佐のモデルとなった「ベルンハルト・クルーガー少佐」の指揮で実行された。ちなみにこれはヒトラー他、ナチス幹部として有名なメンバーの正式な許諾を得た作戦だった。
この仕事に関係した元新鋭隊員らから得られた証言により、1959年、オーストリアのトプリッツ湖底から発見された9つの木箱からは「1億3460万ポンド」にも及ぶ贋札や精密な原版、特殊な工具、そしてこの作戦の実在を裏付ける機密文書が発見されたという。
この作品は「ベルンハルト作戦」に強制参加させられた元・強制収容所囚人のユダヤ人印刷工、アドルフ・ブルガー氏の証言と著書に基づいて制作された映画である。史上最大の贋札製造事件とも言われるこの作戦に携わった人々の、まさに極限状態としか言いようのない当時の状況やそれぞれが心に抱えた葛藤、怒り、悲しみが、まるで自分がその現場に居合わせているかのようにリアルに、濃密に描かれている。